アメリカの世界戦略を知らない日本人

Isao2004-05-01

●著者:日高義樹PHP
●レビュー;
1989年ベルリンの壁崩壊と共に終結した東西冷戦。著者は現代の米国において、冷戦思考の延長では国際政治を語れないと本書で論じる。冷戦時代における米国の国際政治論とは「抑止力と封じ込め」であり、つまりは核兵器による抑止力であり、国際協力(同盟国)による封じ込め策のことである。また、本書の指す現代とは2000年に誕生したブッシュ政権以降のことで、主に同政権による国際政治策について纏めている。

本書を読んだ後、今年秋に行われる大統領選挙への関心が更に強まった。日本人の自分にとっては選挙権を持たない他国での大統領選挙にすぎない。しかしながら、現在、ブッシュ大統領が全世界に見せ付けている米国大統領の持つ指導力と権限は大変なもので、この点では「何とか族」(道路族とか)との調整に追われる日本の総理大臣なんかよりよっぽど誰が指導者になるのか興味を引かれるし、一方では現代の米国の経済力、政治力、軍事力を考えれると日本への影響力も計り知れないものがあるからだ。
本書で紹介されている米国の一国主義論への賛否両論は別として、米国がその路線を進んでいることは疑いようもないし、本書は地域別(国別)にその主義・政策をよく纏められていると思う。(多少主観的だが。)本書はイラク戦争前に書かれているので、著者は同戦争を楽勝に納め、次に北朝鮮・中国を標的にすると書かれている。だが、著者の予測に反し、イラク戦争は楽勝どころか日増しに戦火を強めている。これはブッシュ政権にとって予測外のことであり、同政権再選の為にはかなりの痛手となっている筈である。ブッシュが再選するか?orケリーが政権奪取するか?・・ブッシュが再選すれば、イラク戦争の失敗を省みず、更に一国主義を強めるかもしれない、そして著者の言うとおり北朝鮮もしくは中国との戦争を起すことも考えられる。アメリカにとっては、中東で戦争しようが、アジアで戦争しようが何ら変わりは無いし、日米安保理は既に彼らの眼中にない。本書はそんな米国における最新の国際政治論を紹介しており、それを知るうえで大変参考になった。また同時に今年の大統領選挙が日本(アジア)にとり、目を離せないものでることを再認識した。