弥勒

Isao2004-04-27

●著者:篠田節子講談社文庫)

●レビュー:☆☆☆☆☆
インドとネパールの境にある架空の国「パスキム」。ストーリーは、同国で起きた理想国家設立を志す革命家ゲルツエン主導によるクーデターに事を発し、かつてカンボジアポルポト解放軍が行ったような①農村部への強制労働、②恋愛禁止・強制結婚、③仏教の禁止(僧侶の虐殺)、④少年兵の育成、⑤鎖国政策を中心に展開していく。
著者がリアリティ溢れる文書・構成で描写する、主人公=永岡が送った死が日常化した狂気の生活、輪廻転生を信ずる仏教徒たちの魂の救いを求める姿に心打たれ、そして今現在も起きている指導者の暴挙による悲劇に対し改めて悲しみを感じさせる一作です。